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気ままに興味あることを綴るだけ

生まれたばかりの世界を掴み  2
退屈。
真っ先にデバイスに打ち込んだのはその一語だった。
かつては連日のように歩いたニューヨークの大通りも、何度も死線を彷徨ってきた僕にとっては退屈そのものとしか言いようがなかった。
ありふれた平和に聞き慣れた言語は、国境警備隊の一員を相手として任務に当たっていた僕には物足りない物だった。
遥か先まで立ち並ぶ金属のフェンス。ブーツの底で蹴りをかませばガシャンとやかましい音を立てて軋むありふれた妨害物だ。時にはそれが有刺鉄線となり、高圧電流が流されることもあるが、いずれにせよ絶対的な境界線として人々の前に立ち塞がっていた。
当然ながら周囲にはサブマシンガンを備えた警備兵も並んでいた。フェンスを挟んだそれぞれの集団が民族、言語、あるいは宗教などの面によって絶対的な差があればあるほどに両者間の緊迫感も強いものだった。
僕がそこで何をしていたかと言えば、見事なまでの領域侵犯。フル装備で警戒に当たっていた警備兵の頭蓋骨を撃ち抜くか、頸動脈をナイフで掻き切るか、心臓が二度と動かないようにハートを左右に引き裂いてやるのが仕事だった。
当然ながら危険は多い。死んで当然の覚悟を決めた本気の兵士を相手に、上からの命令に絶対服従の下級兵士が正面から挑んで敵うことは極々まれだ。
だから僕たちは大体の場合は五人一組でチームを組んで任務に当たらされた。仲間割れを防ぐための五人。いざという時に民主主義の象徴である多数決のルールに従い決定を下すための五人。ソビエトの経済政策にも使われた五という数値。
それで能力が均等にそれぞれ割り振れればいいのだが、中には寄せ集めだけの成果しか出せないチームもある。万が一、それが前線に送られた場合は単なる犬死にの集まりでは許されない。敵国の捕虜として捕まる場合は勿論のこと、運よく死んだところで装備や武器の形状から何処から指令を受けた存在か、分析されて暴かれてしまう。そうなればそいつらは単なる目眩しの捨て駒どころか、本部が標的として扱われる一因として大損害を引き起こす。
そうならないために何度かの訓練と経験の後、僕たちは一目で互いの力量と諸々の技術を把握する能力を得た。そして互いが何を動機として特殊兵の道を選んだのか、人生における隠された闇までも見抜けるようになった。大抵は金か仕方なくこの道を選ぶしかなかった負け犬連中ばかりだったが、そういう奴らほど生に対して貪欲だ。無茶はせずに慎重に落ち着いた作戦と、無難ながらも確実な一手で相手を仕留めて、成果を必ず物にする。
死を前にすれば誰でも必死になる。
そういう中では、オットー・ビアノスミスは例外とも言える存在だった。
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